どれ程の必要が。

バンドマンでモバイラなBlog

Lenovo『ThinkPad X1 Tablet (2016)』レビュー


完全に新たな扉が開いてしまった。
メインマシンとモバイルの境目が無くなるという、自分にとって転機とも言える鮮烈な体験となりました。
年始に購入した「ThinkPad X1 Tablet」、実際に2ヶ月使ってみてのレビューです。

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正月セールで買った

新年早々、Webで流れてきたAKIBA PC Hotlineさんこの記事でセール情報を発見。
ちょうど帰省しているタイミングでしたが、正月行事と札幌へ戻る飛行機の都合上あまり時間が取れない状況だったため、「買えればラッキー」くらいのつもりで秋葉原へ向かいました。
電気街口を出て、急ぎ足でBUYMOREへ。自作系ショップなので普段はあまり足を運ばないお店ですが、この日ばかりは脇目もふらずに駆け込みます。

X1 Tabletは入口付近のディスプレイに展示してあり、到着してすぐに目に入ってきました。
ケース周りに貼り付けられたバーコード付きのタグを引っぺがしてレジへ持っていくようになっていたんですが、店舗へ到着した時点でラスト2台。
しかもディスプレイ前には、熱心に手元のスマホと展示品とを見比べる男性の姿が…。
完全に時間の問題です。迷うことなく一枚タグを引っぺがすと、慌てて先客の男性もタグを取りました。目の前で完売した。

まあ1.5万円高くて3年保証のモデルはまだ数台残っていたんですが、その値段で買ったかというとちょっと躊躇していたと思うので、買えて良かったです。良いものを新品で安く買えるってとってもうれしいですね。

本機の概要

閑話休題。本機はレノボのフラッグシップとなる「ThinkPad X1」の名を冠したタブレット型PCで、2016年に発売されました。
キーボード部分は着脱式となっており、タブレット背面のキックスタンドでラップトップとしても使えるという、いわゆるSurfaceタイプの2in1PCです。

発売から時間が経っていることもあり、開封レポートや詳しい製品紹介は出尽くしていると思いますので割愛します。
今回購入したのはSkylake世代のCore m5-6Y57、8GBメモリ、256GB SSDという構成のモデルで、型番は「20GG001KJP」です。
SIMカードのスロットは塞がれておりLTEには非対応でした。Lenovo公式の情報ページはこちら。
発売当時のダイレクト価格は227,000円となかなか上位のモデルです。高すぎやしないか。
アマゾンではこんな価格。



名前の通り本機はタブレット端末ですが、キーボードを装着すればラップトップのようにも使えます。
本体は約767g、キーボードを装着しても1kgちょっとと非常に軽量です。
通常のThinkPadと違い、液晶側にCPUやストレージが収められているので、閉じて横から見たときに天板側が厚く見えるのが不思議な感じ。
外部端子としては通常サイズのUSB 3.0を一基、電源も兼ねたUSB Type-Cを一基、Mini DisplayPort一基を本体右側に備えます。
また左側にはオーディオ端子とボリュームスイッチがあり、背面キックスタンドを開いたところにはmicro SDのスロットがあります。通常のThinkPadには及びませんが、拡張性は必要充分です。

ラップトップと違う形状でも、
艶消しのブラックと剛性感のある筐体は健在。背面ロゴの「i」が赤く光るギミックも従来通りです。

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ThinkPadのスピリットがしっかり感じられる、非常に格好良い仕上がりだと思います。

本機の位置付け

2in1のタブレットPCということでモバイラーにとっては非常に魅力的な本機ですが、「どんな用途で使うか?」というユーザーそれぞれの定義が非常に難しい製品であるとも感じます。これはSurfaceを始め他の2in1にも言えることだと思いますが、フレキシブルに使えるということは裏を返せば「帯に短し襷に長し」という事なんですね。
Atom機と同様にサブマシンとして扱うには明らかにオーバースペックですし、かといってメインマシンとして捉えた際、Core mというモバイル向けCPUがどれだけ実用に耐え得るか? 従来のXシリーズの代替として使えるのか? という一抹の不安がありました。

自分の場合メインマシンの乗り換え先として本機を購入しましたが、結論から言うと全然問題ありません
同じ考えで迷っている方がいましたら、安心してメインマシンとして選択して大丈夫だと思います。
DTMやPhotoshopでのデザインワークなど、一般的な用途よりは負荷のかかるPCの使い方をしていますが、いまのところパワー不足を感じることはありません。軽めの動画編集も行いますが、問題なく作業できています。

自宅ではセルフパワーのUSB3.0ハブとMini DisplayPortを活用し、デスクトップPCと同等の環境を構築。ハブ経由でキーボード、マウス、HDD、オーディオインターフェース、MIDI鍵盤などを接続していますが、転送速度も速く、特に問題なく動いてくれています。
ケーブルが多くなって煩わしいため、ゆくゆくはUSB Type-C対応のドックを導入したいところです。

使用感

実際に普段使用する環境を構築して、2ヶ月間フルに運用してみました。
DAW(CUBASE)を使用したDTMでは、以前制作したNIのKONTAKT・Guitar Rigを中心とした30トラック程度の楽曲プロジェクトを開いてみたところ、問題なく再生できました。
バッテリー駆動、かつ省電力な設定で再生するとさすがに音切れしましたが、バッテリーのみで使用する場合でもパフォーマンス重視の設定にすれば問題ありません。電源モードの切り替えは、タスクバーのバッテリーアイコンから簡単に設定できます。
オーディオインターフェースとの相性も問題なく、手持ちのインターフェースはドライバをインストールしたら普通に使えました。

Photoshopも概ねスムーズです。自分の場合最大でA4程度のフライヤーを制作することが多いんですが、大きめの画像を使った複数レイヤーのPSDファイルを開く場合でも、さほど待つことなく開くことができました。

動画の編集やエンコーディングも普通にできます。
そもそも10分程度の短いものしか作らないこともありますが、編集中に特別重かったり、書き出しに時間がかかりすぎたりということはありません。
もちろんより上位のCPUには及びませんが、普通にこなすことは可能です。

ということで、自分の用途ではパフォーマンスは充分であると感じています。もちろんもっと重い作業をする人や3Dゲームを遊ぶ人にとってはパワー不足だと思いますが、そういう人はそもそもメインマシンとして本機を選択しないですね…。

マシンパワー以外の使用感にも触れておきます。
まず画面ですが、所謂2K液晶に該当します。くっきりとした締りのある描画で、
映像コンテンツを楽しむのに向いていると思います。非常に綺麗です。解像度が高く、また画面比が3:2のため、縦方向の情報量に優れるのも特徴。WEB制作の際に力を発揮してくれます。

反面、残念なのはスピーカーです。ステレオですが音質もバランスも悪く、すぐに音割れしてしまい音量もあまり取れません。iPhoneのスピーカーに代表されるように、最近は小さなスピーカーでも小さいなりに破綻のない音が聴けるものあるので、ここは少し残念なポイントでした。ヘッドフォン端子からの音は比較的フラットなバランスで聴けるんですが、うっすらとくぐもったような解像度の低さを感じます。
自分の場合DTM用途ではオーディオインターフェースを繋いで使用するので特に問題ありませんが、「ちょっと使い」にも良い音で聴ければよかったと思います。

キーボードについて

かなり長いことThinkPad使いやってますが、本当に申し訳ないことに実は自分はキーボードにはあまりこだわりがありません。キーピッチがそこそこあって、ブラインドタッチで打てればもう文句はない。打鍵感とかもどうでも良くて、実際家で使っているキーボードは上海問屋かなんかで適当に買ってきたノーブランドのよくわからない千円くらいのヤツです。以前の記事で書きましたがYOGA BOOKですら全然なんとかなってしまいました。
なのでX1 Tabletのキーボードは「最高に打ちやすい」という頭の悪い評価になります。100点です。参考にならなくてすみません。パームレストがピーチスキン加工で手触りが良いこと、本体が画面側にあるので熱くならないので使い勝手が良いです。マグネットで着脱する仕組みですが、ガッチリくっつくのでちょっと本体を持ち上げたくらいでは外れないのも良い。
それでいてこの薄さと秀逸なデザイン。良いところしかない。2in1でこんなに素晴らしいキーボードが付いているのはやはりThinkPadだけなんじゃないかと思います。

電源周りの注意点

本機は電源にUSB Type-Cを採用しています。
徐々に普及してきている感のあるType-Cですが、自分で対応機種を所有したのが初めてだったのでちょっと戸惑いました。種類がいっぱいあるんですね…。

データのやり取りはさほど問題ないんですが、電源として使う場合に注意を要することがわかりました。「USB PD(PowerDelivery)」という規格に対応していないとダメなんですね。
付属の純正アダプタは自宅の据え置き用にして持ち運びたくないので、外出用にもうひとつアダプタが欲しいと思い、上海問屋の「DN-915106」を購入しました。
調べたら意外と選択肢がないんですね。ちょっと急ぎだったので札幌駅周辺の実店舗で探していたんですが、PD対応のアダプタは上海問屋のこれしか見つけられませんでした。
ちなみにケーブルもPD対応でないとダメなので注意が必要です。自分はエレコムのこれを買った。
ネットでは安定のAnkerやAukeyが販売しているので、時間があればこちらを買うのが無難かと思います。

 

USB PDがもう少し普及してくれれば便利ですね。

フットプリントがデカい

これもSurfaceタイプの2in1に共通する欠点ですが、キックスタンドを開いて自立する機構の関係上、フットプリントが異様にデカくなってしまいます。

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特急のテーブルだとちょっとはみ出すくらい。
膝上での作業も、できなくはないですが普通のノートに比べるとやっぱり安定はしません。

薄さ軽さとのトレードオフと思えば全然許容できますが、とにかく落下事故には気をつけようと思います。

いまから本機を買うのは「アリ」か?

既に後継機の2017年モデルが発売されていますが、CPUが一世代新しくなったマイナーチェンジモデルであり、基本的なスペックや外観に大きな変更はありません(電源ボタンが不意に押されないようツライチに変更されている、キーボード装着時に不意に開かないようになっているなどの改善点があるそうです)。

また先日2018年モデルが発表となりましたが、
こちらは13インチとなり、デザインやサイズ感含め刷新されています。
画面の大型化や、ファンレスだった2016・2017年モデルに対しファン搭載となるなど、ややホームユース寄りにデザインされている印象です。液晶の解像度が上がりCPUも4コアとなるなど、スペック面も大きく向上しています。その分価格は上位モデルで26万円と高めの設定です。

総じて、2018年モデルが順当にスペックアップしつつも若干路線を変更してきていること、2017年モデルはマイナーチェンジであることから、「価格がこなれてきている2016年モデルを安価に購入する」という選択肢は充分に「アリ」だと思います。
前述の通り、スペック的にもまだまだ通用するものです。安価に見つけられたら是非選択肢に加えてみてください。


総括:メインマシンとモバイルの境目がなくなった

ネットブックから始まりUMPCや最近のWindowsタブレットと、ここに至るまでにたくさん小型PCを利用してきましたが、いずれもメインマシンにはなり得ず、サブ機の位置付けでした。
しかし本機をメインマシンとして導入したことで、ついに自宅での環境を文字通りそのまま持ち出すことが可能になりました。これはちょっとした革命だ。


元々はThinkPad X201がメインだったので、もちろんこれまでも持ち出せないことはなかったんですが、「普段使いのカバンにすっぽりと収まって毎日持ち歩いてもまったく苦にならない重さとサイズ感」というのは本機ならではです。

2in1という形状も自分にはすごく合っていたようです。キーボードを取り外したタブレット形状でも結構使っていて、縦持ち+マウス代わりのLenovoペンで操作しているとメインマシンであることを忘れそうになります。それくらいモバイル。
持ち歩かない理由が見当たらないので、基本的に毎日持ち歩いています。
外でもメインマシンと同等の環境で作業したい、という方にはとてもオススメです。

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