どれ程の必要が。

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CHUWI『GemiBook (2021)』レビュー


中国・深センの電子機器メーカー、CHUWIのラップトップPC「GemiBook (2021)」を購入しました。まごうことなき激安ノートPCなんですが、正直これめちゃくちゃ気に入っています。使い込むほどにダメなところが見つからない。
実際に約三ヶ月、持ち出し用のPCとして運用してみてのレビューです。

まえがきと製品概要

CHUWIは比較的老舗のチャイナメーカーで、「ツーウェイ」と読むそうです。ずっと「チュウイ」だと思ってた。名前は以前からよく見かけていましたが、実際に製品を購入したのは今年になってからが初めてになります。

先に超小型PCのLarkBox Proを買ったんですが、思った以上に良かったんですね。激安なのにスゲーよく動くなと。
その流れで、これならノートPCも欲しいなーとなり、本機の購入に至りました。


自分が購入した際はAmazonで3.3万円。スペックはCeleron J4125搭載、8GB RAM、256GB M.2 SSD、13インチのモデルです。
頻繁にクーポンが配布されており、大体いつも3.5万円くらいで買えます。
Banggoodより安いことも多く、早く確実に届くので、CHUWI製品に関してはAmazonでの購入がおすすめです。

2021年12月現在、GemiBookはモデルチェンジを経て「無印(2021年版)・Pro(2021年版)・X」の3つのモデルが流通しています。
「Gemini Lake」という世代のセレロンを搭載しているのが「Gemi」の由来だったはずですが、Pro(2021年版)とXはJasper Lakeのセレロンを搭載しており、命名規則が崩壊しているのが笑えるところ。
更に最近発売されたXに至っては、アスペクト比3:2というコンセプトからも逸脱した16:9の液晶を搭載しており、もはやまったく別のモデルと言っていいでしょう。
メモリやストレージ容量が抑えられていることから、どちらかというとより安価なHeroBookの後継機種のように思えます。
名前だけ見るとより上位グレードのモデルに見えますが、そういう訳ではないので注意してください。

①GemiBook (2021)
今回自分が購入した13インチモデルです。発売当初の無印GemiBookと仕様が異なるので、便宜上(2021)と呼びます。
Celeron J4125、8GB RAM、256GB M.2 SSD、13インチ。ディスプレイ解像度2160*1440、アスペクト比3:2の2K IPS液晶を搭載。



②GemiBook Pro (2021)
少し大型の14インチモデルに、新しいCPUを搭載したもの。Jasper Lakeのセレロンを搭載しています。命名規則が崩壊しているのはご愛嬌。
Celeron N5100、8GB RAM、256GB M.2 SSD、14インチ。ディスプレイ解像度2160*1440、アスペクト比3:2の2K IPS液晶を搭載。



③GemiBook X
大型の15.6インチモデル。Jasper Lakeのセレロンを搭載。どちらかというと下位グレードのHeroBookに近い構成。
Celeron J4125、4GB RAM、128GB M.2 SSD、15.6インチ。ディスプレイ解像度1980*1080、アスペクト比16:9の液晶を搭載。



尚、2020年発売の旧モデルはCPUがJ4115でメモリやストレージ容量が大きいというものでした(無印が12GB RAM、Proが16GB RAM)。
メモリは多いに越したことはありませんが、セレロン機ということを考えると、基本的には2021年版で問題ないかと思います。

自分は今回、ThinkPad X250からの置き換えで持ち運び用のノートが欲しかったので、筐体サイズが同じくらいの13インチ版をチョイスしました。
12.5インチのX250とフットプリントはほぼ同じで、まあまあ薄くなり、重量はちょい軽くなった感じです。

外観

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今風なアルミ天板にしっかりとした作りの筐体。3万円ちょいで買えるPCの見た目じゃないです。さすがにハイエンドと比べると見劣りしますが、7~8万円のノートと比べても全然負けてない。
重量は1.3kg程度と軽くはないですが、モバイルノートPCとしては充分に持ち出し許容範囲だと感じます。
キーボードは充分なキーピッチがあり、しっかりしたクリック感のあるタイプです。OSの初期設定時点ではUSキーボード(英字キーボード)として認識されていたので、Windowsの設定から日本語(109)に設定しました。
これで左上のキー(1のとなりのキー)で英語/日本語切り替えができます。もちろんキートップの表示とは異なる記号が入力されますが、自分は英字キーボードで109入力することに慣れているので、この設定で問題なく使っています。

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トラックパッドは適度な広さで反応は良好。普段使いであればマウスは必要ないクオリティです。複数指でのジェスチャーにも対応していますし、キーボード入力中の誤動作とかもない。プラスチッキーでややチープな手触りですが、操作するのに困ることはありません。

実際に使ってみました

さて、この記事をご覧の皆さまは、本機がどの程度のパワーを持っているのか、どのような用途で使えるのかが気になるところだと思います。
ベンチマーク的な数字は既に他のレビューサイトで語りつくされていると思いますので、ここでは実際に自分の用途で使ってみた所感を書いてみたいと思います。

・ライブでのDAW再生マシンとして
オーディオインターフェースを繋ぎ、DAWソフト「Studio One」で合計10トラック程度の音声ファイルを再生しました。また付属のアンプシミュレータでリアルタイムにVSTエフェクトをかけつつギター演奏するのに使用しました。
軽めのVSTエフェクトではあるものの、リアルタイム処理をしながらでも音切れすることなく30分のライブステージを完走。
また、リハーサルでは数時間連続で稼働させていましたが、不安定になることもなく、問題なく録音・再生ができました。

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↑カラオケでMTR代わりに使うの図

SSDのおかげで立ち上げも速く、オーディオインターフェースと組み合わせてMTR代わりに使用したり、ライブでのオケ再生機として問題なく使用できるスペックだと思います。

・VJ用アプリケーション「Resolume」で動画素材のポン出し
こちらもライブでの使用です。本来の使いみちとは異なりますが、VJ用の「Resolume」というアプリケーションを使い、「演奏中の背景として1分程度のループ動画を場面ごとにポン出ししていく」というお仕事を本機で行いました。
演奏に合わせて映像を出す、劇伴みたいなイメージですね。
動画を扱うということで再生にパワーを要するのでは…と一抹の不安がありましたが、きちんとVJソフトに最適化した形式に動画をエンコードしておくことで、難なく乗り切ることができました。
尚本機には映像出力端子がありませんので、こんな感じの変換アダプタを使い、USB Type-Cからプロジェクターへ出力しました。フルHDの30fps程度であれば、カクつくこともなく綺麗に出力できます。

・配信用アプリケーション「OBS」でツイキャスやYouTube Liveの配信
動画配信用のフリーウェアOBSと安価なビデオキャプチャを使い、2カメでのライブ配信を行いました。
ちょっと話が逸れますが、通常、複数のカメラを切り替えての配信は「ビデオスイッチャー」を使うのが一般的とされています。ですがこのスイッチャーが結構高くて、なんならもう何台かGemiBookが買えてしまうような代物なので、1~2千円程度の安価なビデオキャプチャで代用。結論としては問題なく配信できます。調子に乗って本体のWEBカメラも含めて3台同時に動かしてみましたが、特に問題はありませんでした。
今回自分は競合を避けるためにビデオキャプチャは2台それぞれ別のものを購入しました。
購入したビデオキャプチャはこちら。

 

また、USBハブにビデオキャプチャを2台つなぐと認識しませんでしたので、USB Type-Cポートと通常のUSBポートそれぞれに接続したところうまくいきました。
意外とこの方法で配信しているという情報を見かけなかったので、備忘録として書いておきます。

・画像編集
WEBブラウザ版の「Canva」や「Photoshop CC」でA4程度のフライヤーを制作する用途で使っていますが、複数のレイヤーを扱う場合でも問題なく動作しています。

・動画編集
普段使っているVEGAS Pro 18を入れてみました。切って張ってくらいの簡単な編集であれば大丈夫ですが、フェードなどのエフェクトのリアルタイムプレビューがかなり厳しい。なによりエンコードに死ぬほど時間がかかり、挙句書き出しに失敗することも。
さすがに荷が重いです。

・低スペックなゲーム
スペックなりに動きます。グラフィック性能は最低限なので、基本的に3Dゲームはできないと思っていいでしょう。最近のもので普通に遊べたタイトルとして、MTG ARENAを挙げておきます。これくらい動けば充分です。

こんなところでしょうか。もちろんブラウジングやブログ編集といった作業は当たり前にこなせます。いまもこのブログを書きながら20個くらいタブを開いて作業していますが、ブラウザが落ちたり動作が重くなるようなことはありません。
「ノートパソコンに要求されるだいたいのことは、問題なくこなせる」という感じです。

気になったところ

使い込むほどに悪いところがほとんど見当たらないんですが、いくつか気になった点もありましたので書いておきます。

・天板が開けにくい
これが一番気になるかも。下半身の手前部分に切り欠きがあり、いちおう指を引っかけられるようにはなっているんですが、いかんせん開けにくいです。
外で急いでる時になかなか開かず、落としそうになりました。危ねえ。

・デリートキー、カギカッコキーの配置が変則
109配列にしてもデリートキーとBSキーが逆なのが気になるっちゃ気になる。あと、本来デリートキーがある場所に電源キーが鎮座していますので、うっかり押下するとスリープになってしまって焦ります。
カギカッコがいちばん変則的かもしれない。デリートの左が「カッコキー」、左カーソルの左が「カッコ閉じるキー」です。これはいまだに慣れない。この記事はすべてGemiBookで書いていますが、やっぱり頻繁に押し間違いますね。

・十字キーの上下が極端に小さい
キー一つぶんのスペースに二つ入ってるもんだから、単純に小さくて押しづらいです

以上、どれも無視しようと思えばできるレベルの話で、本当にこれくらいしか気になるところがない。
改めて「よく出来ているな」と感心してしまいます。

総評:必要充分なスペックの超コスパマシン

液晶がとにかく綺麗で、3:2と縦長なことも相まって快適に作業できますし、動画鑑賞にも充分耐えます。
キーボードも多少慣れが必要なものの基本的には打ちやすく、使い勝手のいいトラックパッドもあり、生産性は高いです。
バッテリー容量については上位モデルに及びませんが、普通に使って5~6時間は持ちます。いざとなればPD対応のモバイルバッテリーでも充電できるので必要充分でしょう。
これで実売3.5万円は破格すぎます。いい時代過ぎるだろ。一昔前のノートを中古で買うくらいなら、断然本機がおすすめですね。
アルミ筐体が綺麗だし、薄くてそこそこ見栄えするのもいい。基本的に毎日持ち歩いていますが、苦にならない重さです。スリムなので鞄への収まりもいい。OSに変な仕込みがあることもなく、至って普通に使えています。

耐久性については疑問が残る部分ですが、三ヶ月運用していまのところ特に問題はありません。
2年も使えば充分元が取れるかと思いますので、ひとまずはそれくらいを目安に、今後も使い込んで行こうと思います。

そういえばWindows11にもばっちり対応していました。
近いうちに入れてみようかな。

Celeron J4125に見る「ロマン」

余談になりますが、「ローエンドの最新CPUが5年前のハイエンドCPUに比肩する」という状況にロマンを感じます。


J4125はPassMarkで3,000点超え。世代でいうと第5~6世代くらいの、モバイル向けCore i5程度の性能です。
これこそ「技術の進歩」だよなー。
お金を出せばいくらでも良いものが買える世の中で、こういうプロダクトに出会うと、技術の進歩に思わず感動を覚えます。
コスパにこだわってしまうのって、それが原点なのかもしれません。
だってねえ、かっこよくない? 科学の力ってスゲー! ってやつですよ。
これからもこういう、ささやかな感動を噛みしめられるような感性を失わないように生きていきたいと思います…。

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