Google日本語入力の背景に好きな画像を使えると気づいて、なんとなくゴリラの画像を設定してみた。
とにかく最初の頃は破壊力が半端じゃない。
健やかなるときも病めるときも、等しくゴリラが鋭い眼光でこちらを見つめてくるものだから、異様に落ち着かないし何より気を抜くと吹き出してしまう。
想像してみてほしい。うっかりテキストボックスをタップしてしまうと、画面下からスッと唐突にゴリラが現れるのだ。
もしそれが笑っちゃいけない場所だったりしても、耐えられる自信がない。
他人に画面を覗かれることにも敏感になった。
なんでこの人、キーボードがゴリラなんだろう?
頭おかしいのかな、と容易に疑われてしまう。
そこは普通はゴリラが常駐していいスペースではないからだ。
そんな調子で、出先でスマートフォンを使う際にもいちいち細心の注意を要する有様だった。
そもそもただでさえ、頭と指先を鍛えるぞ! と一念発起し、ホーム画面をわざと使いにくくした後だったのだ。
脳が死なないように、スマホのホーム画面からアイコンをすべて消してわざとめんどくさくしました
— 神宮カミト (@kamito620) 2017年4月27日
電話ラインブラウザなど、よく使う機能はなにもない空間を特定のジェスチャーでスワイプすると出るようにした。家で弄る時には問題ないのに出先では全然咄嗟に思い出せなくて、良い感じにつらいです
— 神宮カミト (@kamito620) 2017年4月27日
昔はスタイラスで超小さいバツボタンとか押してた訳だから、それくらいの困難をもってモバイルと向き合いたいですね
— 神宮カミト (@kamito620) 2017年4月27日
大好きな我妻由乃の素敵に血まみれな画像を壁紙に設定したので、ジェスチャー思い出せなくて長時間ホーム晒してると人格を疑われるという仕様です
— 神宮カミト (@kamito620) 2017年4月27日
そんな日々さえも、適応という小さな進化が、段々と塗りつぶしていく。
テキストボックスをタップすると当たり前にゴリラが登場するが、もはや動じることはない。
鋭く見えた眼光は穏やかさと慈しみを湛えた優しいものに変わり、それさえも通り抜けていく。
――ただの背景のゴリラだ。
そのことに気づいた時、またしてもゴリラが襲ってくる。なんだこれ、どういう状況だよという自分へのツッコミが腹の底で笑いに変わり、思わず口の端が歪んでしまう。
もしそれが笑っちゃいけない場所だったりしても、耐えられる自信がない。
いま、自分は便利さとは遠いところにいる。